近くで人気のM小児科医院(Mこどもクリニック)が、突然の閉院となった。小児科医で結構腕も、評判も良く、アタリも良かった院長で、その性格から遠路足を運ぶ母子連れも多かった。
医院玄関先の案内を見てみると「M医院長の都合により、しばらく休診します。」とある。突然の閉院にかかりつけの患者や周囲も驚いた。よくよく事情を探ると、どうやら院長自身にご病気が見つかり入院したようだ。
どんな優秀な医者でさえ患者を診ることができても、自分自身を診ることは出来ない。また、優秀な医者だからといって、重篤な病気に罹らないといった保証もない。
行きつけの歯医者に聞いたことがある。「先生自分の歯の治療はどうするのですか?」と。馴染みの床屋にも聞いた「自分の頭髪は誰が刈るのか?」と。そうしたら、両者ともにどうやら、知り合いの仲間に面倒を見て(診て)もらうそうだ。
灯台下暮らし、医者の不養生、紺屋の白袴、そして極めつけは「不死身のクソ坊主」だ。つまり、亡くなった仏さん成仏させる役目の生臭坊主が、イザ自分が往生するときにはなかなか成仏できない例えがこれだ。
また、来月には旧盆がやってきて、菩提寺の法上さんが祭壇を前に、ものの2~3分程度のやっつけ読経をあげに実家にやってくる。お布施を用意し、不義理があってはと思いつつ、重い足取りで再び帰省しなければと思うと気は重い。不謹慎だが、正直「坊主憎けりゃ袈裟まで・・・?」といった気分なのだ。
さて、前出のM小児科医、しばらくして医院門前に「訃報」が案内されていて、医院ごと他所に引っ越すという。稼ぎ頭を失った奥方様やご家族のことを思うと、言葉もない。腕の良い者ほど、人格者ほど惜しまれつつ、この世を去っていく。