お袋の兄とは、当方にとっては伯父にあたる。この親父は第二次世界大戦に日本陸軍として中国内陸部の奥深い重慶まで進軍した。その当時は婦女子もなく鬼畜がごとく軍刀で殺めた惨憺たる経験話を何度も聞かされた。
子供ながらその惨さは、口にもはばかれる恐ろしさだった。
その伯父曰く、「橋の上を歩く勤め人になるのか?その橋の下で施しを請ける乞食になるのか!よく考えろ!」とよく言われたことを思い出す。
今思えば、当方の将来を気にかけての説教だったような気がしている。
その後、間もなく伯父は苦しみ喘ぎながら肝硬変でなくなったが、亡き母はいった。
戦争とは筆舌につくし難い惨憺たる残虐で言葉にもできない。と。そして勝者も敗者もないと言った。
この時世になって戦争の無惨さを悔いる声を聞くが、それは後講釈で、言葉にも出せない悲惨があったという。
何時までも歴史的敗戦や併合時代のトラウマに取り憑かれ、媚びる国もある。
戦後の反省とか、平和第一とか、補償とか謝罪とか、本当の事を知る者ほど歴史や経験を口にしない。亡母曰く、戦争とは非情で人知を超えた世界だと。
伯父も母も戦争経験者だから言葉は重い。軽々に戦争を知らないこどもらがそれを語るのは如何なものか?
真実はその人の心にしかないのだ!