今回は日光白根山。路線バスを乗り継ぎながら群馬の片品村から入る。ここに山小屋とは一風変わった温泉宿が所在する。ここは知る人ぞ知る名だたるお宿で、その昔、今の天皇陛下が幼少のころ丸沼高原にてスキーに興ずべくお忍びでこの宿に泊まったとご主人からお聞きした。
お泊りは本館とは別に離れが据え置かれている。その名は「加羅倉館」さすがに料理は旨くお部屋の設えもマズマズ。驚いたことに侍従が待機する前室のその先に前々室がある。とにかくダダ広い。
陛下がお休みになられた、この部屋に泊まり、明日の登頂を目指す。ところが湯に入ろうとするとやけに湯舟がでかい。そのうえ滝のようなお湯が天井から落ちてくる。人が入る風呂なのだろうかと改めてご主人に訊いてみる。
すると、なっ、何ンと「ここは競走馬の温泉治療にも使っている」との由。そんな施設がこんな山奥にもあるんだと感心しきり。
翌日、山頂を目指すが前の晩の酒が残っていて思うように足が運べない。やっとの思いで登頂。ところが日光湯元までの下りがきつい。厳しい。これ逆コースだったら体がもたないわ!それにしても避難小屋界隈に野生のシカが多いこと多いこと、餌やるせいか人を怖がらない。
天狗平までが半道中。ここから先の下りが尋常ではない。くだっても下っても麓につかない、やっとの思いで開けたスキー場のトップにたどり着く。
山そのものは大したことはないが、苦行、難行の山旅。日光湯元についてあれは硫黄泉か?狭いヒノキの風呂に男三人で入った。そのせまい湯舟が狭いこと狭いこと昨日のお風呂とは大違いだ。
そうした思い出を作ってくれたあの先輩は、今は鬼籍のひとだ。