42年もの間勤め上げた会社を辞めて、早くも一年が経つ。この間、病気にも罹ったが、孫にも恵まれた。退職後はのんびりできるかと思いきや、病院しかり、常にハラハラ、ドキドキの連続である。かえって勤めていた時の方が気楽だったのかもしれない。
現役の頃は、活きの良さを買われ「寒ブリの徳さん」と称され、若い奴らにおだて上げられたものだ。いまは、引きこもった鯵の干物のようで、腹の皮を天日に晒している。 ただ、根はブロガーではなくアウトドア派、少しでも体が動かせるようにと、知り合いの居酒屋で、社会経験を兼ねてちょっとだけアルバイト(どちらかと云うとお手い)をすることとなった。
会社勤めとは全く違い、接客から、配膳まで、板長に叱られながら何とかやっているが、市場に行っても、目が効かないものだから仕入れは任せて貰えない。一人前になるには最低10年はかかるという。サラリーマン時代は正解の無い目先の課題を何とか熟してきたが、こうした職人になるには腕、目、耳、鼻、舌が効かなくては商いにならない。そう思うと40年以上勤めて残った無形財産は何もない。
ここに来るまで、ハローワークに何回か通い「求職」したが、担当者から「貴方何ができますか?」と問われたとき、「○○部長、○○役員・・・」と職歴を即答したが。どうも、質問の趣旨は、貴方はどういう技術や資格をもっていて、それを活用した実経験があるのかということを聞いているらしい。
ふと、そのとき自動車運転免許は持っているが、最近、殆ど車も乗っていない。これでは、店の買出しにも行けない。皿洗いで荒れた手をじっと見つめる徳兵衛であった。
(今日のおまけ)
関サバ、下関のフグは有名だが、料理人の間では「茨城のスズキ」も有名で味も抜群と聞く。ただ、福島原発の影響で福島、茨城沖では、放射能検査のために試験操業しか認められていない。地元の漁師は、平気で魚介類を召し上がっているようだが、とにかく魚影が濃く、一度網を入れるとかなりの量の魚が上がるそうだ。そんな折、海底のエビや貝類を餌としているタコも良く上がるそうだが、漁師が持帰ってタコを捌くと、気味わるい話だが「髪の毛」が出て来るそうだ。まさに人を喰った話だ。