この時期の早朝散歩は心地いい。東の空には、爪切りで切ったような三日月がっぽっかり浮かぶ。ゆく道すがらには「金木犀」の香りが漂う。そういえばその昔、この香り(コロン)を好んでつけていた彼女を思い出す。
朝から発情したのか、野良猫たちが他人の喋りのようにワー、ニャーと騒ぎ立てる。セミの音はいつしかか細くなり聞こえなくなった。その代わりに合唱していたコウロギや鈴虫の音も随分とか細くなった。生き絶え絶えなのだろうか?
そんな中でも、無灯火で走る自転車。マスクすらしないで走るランナー。空しく腕につけた赤色灯と、事故防止用のランプが光る。
相変わらず、淡々とラジオは喋っているが、季節は間違いもなく移ろいでいる。そんな時、いつもの、秋サンマが東北の女川から届いた。御大はかれこれ20年以上の付き合いで、無骨な人間ながら人情は厚い。
それにしてもうれしい限りだがトロ箱に30尾以上も入っている。には、・・・。不漁続きのサンマや好意に対し。一年分を夫婦だけに寄贈されても・・と思う次第。
ご近所、子どもや知り合いにまでおすそ分けするのだが、刺身、ボイル、焼きにしたところで到底、追いつかない。
されどこれも、季節、旬、それに人の温もり。何故だか急に「アップルパイ」が喰いたくなった。