松本清張原作「黒革の手帳」で主人公の原口元子が良く使ったセリフだ。その話とは全く関係ないがみなさん「講」というものをご存じだろうか。頼母子講(たのもしこう)、富士講、庚申講(こうしんこう)・・・など、江戸時代からつい最近までこの講が脈々と各地域で息づいていた。
さて、この中で「庚申講(こうしんこう)」についてちょっとお勉強しまひょか!「獅子尸中の虫」(体に宿った虫が体の中か蝕み中から腐る例え=腐った組織などの例えにも使われる)。人の体内には三匹の尸(し)、または彭(ほう)=(虫)が潜んでおり、庚申(かのえの「さる」)の夜、人が眠っている間に抜け出して天帝のもとに上り、その人の罪や過失を告げて(通告:密告)命を奪わせるといういい伝え。
だから、この日は、人が眠らなければ三匹の虫が抜け出せない、ということでその夜は眠らずに身を慎んで過ごさねばならないとして、地域住民や信奉者が夜な夜な集まり、禁忌を誓った。最近は、この伝承が薄らぎ、会食・談笑に重点が移ったものの、実はこれ相互扶助組織の考え方の原点で共助に近い思想がある。これを重んじることによって一つのコミュニテイが形成、継承されたと考えてもいいだろう。
「庚申」の本体は諸説あるが、大日如来、帝釈天、猿田彦や道祖神など様々であるが、寅さんで有名な葛飾柴又の帝釈天、安曇野の道祖神、登山道でよく見かける大日岩や大日如来像、これらの神仏は現世に利益をもたらすとものとして崇められている。
余談だが娘の名前は松本市に所在する「猿田彦神社」から戴いた。勿論、彼女の干支は奇しくも申(かのえのさる)年。暦で調べてみると、申には「ひのえのさる」、「つちのえのさる」、「みずのえのさる」「きのえのさる」がある。今月の「庚申(かのえのさる)」当日は7月26日。次は9月25日。ここからは酒飲みの講釈だが、御神酒、そして餅と昆布を小さく切ったものを御供に、この日は夜を明かして呑んだ方が良さそうだ。
(今日のおまけ)
秋葉原講と秋葉原の地名の由来は、江戸の町が抱えた問題と秋葉山信仰に関係があることをご存じであろうか?江戸の町は、木造の建物が密集していて日頃から火事が多い町であったことはご存じの通り。
ここで、延焼を食い止める空地が今の秋葉原(空原らっぱ)の由来。火防の神様が秋葉山と祀られているのも、ここから来ている。これも山岳信仰に深く結びついていて秋葉山信仰にも深い関わりがあるという。
このように、講も、山神さまも、水神さまも、そうした古来からの伝承やいい伝えに対して人間が驕っていると、突然、今回の西日本の大雨被害のように手痛い仕打ちを受ける。