隣の家のピアノの音に苛まれ、この時期室内に小虫が蔓延るのも気になっては手足で握りつぶす。早朝の散歩途中のマンションの一角。
いつも部屋の電灯がついている。灯りが尽き乍らベランダに洗濯ものが干してある家があるのも不思議だ。
かならずと云っていいほど、散歩途中のマンションの四階部屋のカーテンも窓も空いている。多分、夜中から朝までづっとそうだろうな。
でも、その部屋から男の大きな声で歌声が流れてくる。周りは寝静まって静寂なのに部屋だけから歌声が響く。本人は心地よいだろうが、野中の一軒家ではあるまいしこれほどの迷惑もあるまい。
昼夜逆転はともかく、騒音や雑音は寝静まった夜ほど響く。職場や授業中でもそうだが、威嚇に似た大声や罵声には身が篩える。そんな経験も何度もした」。
そんな散歩途中の折、配送の山パン(山崎パン)のトラックドライバーがこちらを見て手を振ってくれた。いつもの配達ルートに当方の歩きが判ったのだろうか、こちらも手を振って答礼する。
顔見知りや人付き合いはこんなことから始まるもので、クラクションも鳴らさず行き交うひとの交わりはこんなことから始まるのかも知れない。
声も出さず、オーバープレゼンスをするまでもなくひと人のお付き合いはこんなことから始まるのかも知れない。いまさらながら自省の念。