時として、善意は際どい悪意になる。「元気そう!頑張ってな」、「気持ちの持ちようだ!」と、何の根拠も担保もなくあり難いお言葉をいただく。それはそれでひとまず感謝する。でもこれは言葉の響きだけであって、ご本人には全く届いていない。むしろ険悪な嘆だ!
「心に寄り添う」などと聞こえのいいフレーズは、まさにその逆だ。苦しんでいる人、病に倒れている人、一通りのご挨拶のように儀礼をつくし、ぬくもりのあるような言葉のマジックを繰り返す。
ではなく。冷静に、専門家して、プロとして、医者も、看護師もそうだが大病に堕ちった人間に、「さあ、がんばりましょう!」、「これからです」と云われたところで、何の励みにもならない。
ありきたりの温もりや優しさに結構メンどっちい。本人は本人にしか分からない苦しみや辛さがある。それを理解でき、そのうえの言葉は重い。冷静に受答えする医者、看護師ふざけた言葉にも乗ってこないまま、それこそプロだ。とときどぎに感情移入したら持たない。
だからこそ、重い病を背負った患者の一言は重い。どうやらこの世の中、言葉遊びだけに踊っているようだ。だから、却って不幸を背負った人間は独り籠りたくなくのも無理もない。