Koushuyaの徒然日記・オフィシャルブログ

多くの方々からブログ再開のご要望をいただき、甲州屋徳兵衛ここに再び見参。さてさて、今後どのような展開になりますやら。。

罠(ワナ)師:片桐邦雄「ジビエの極意」

f:id:koushuya:20190107041440j:plain


 正月三が日の初詣を避け近くの弁天さまにいつもの年のように夫婦でお参りに出かけた。初詣とおみくじの謂れについては次機に譲ることにするが、帰宅してテレビをつけると罠師でジビエ料理人でもある片桐邦雄氏のドキュメンタリーが放映されていた。

 

    片桐は、秋から冬にかけ毎日100㎞近くの獣道を歩き、「ウツ」と呼ばれる場所に罠を仕掛ける。彼はこんな生活を45年も続けている。それに捕った獲物を血抜き、解体してジビエとして料理も提供する。実は、片桐は罠師でもありまた料理人でもあるのだ。

 

    驚いたのは片桐の感性とストイックな性格だ。獲物と対峙するときは、自分自身の気配を悟られないように、普段から酒やタバコは一切やらず、整髪料や化粧用クリームはもとより風呂に入るときは入浴剤も使わないという。特に狩猟シーズン中は一度も体を洗わない。さらに、野生との闘いのため、罠に餌を撒いて獲物を捕獲しない。なぜなら、獣は餌を食べた瞬間から野生は「家畜」になるとの考え方を持っているからだ。

 

    放映された番組でイノシシの捕獲の瞬間を観たが、捕獲はまさに命がけ、暴れる獣の体力を徐々に奪い、視界をテープで塞ぎ、捕えた獲物の興奮と恐怖心を和らげる。

    それというのもボタン肉の味を落とさないようにするためらしい。そして、獲物を解体するときは、獲物のストレスを最小限にするため、鑓の一突きで命を絶ち、それを手際よく食材に変えていく。

 

    つまり、トサツするときは、何のためらいもなく「(ワタシを殺めるなら)殺すなら(いっそ、あなたの手で)一撃(一突)で・・・」ということで瞬殺する。

 

    魚も獣の肉もそうだが命を絶たれた瞬間から酸化が始まり腐敗が進むから、素早く血抜きすることが大切だ。これは、人間さまのご遺体の「エンバーミング」とは真逆だ。そして捌いた肉を頂く時は、料理を前に「頂きます」と手を合わせ「余すことなく美味しく食すること」が鉄則らしい。それが自然に対する畏敬であり生き物に対する感謝の念の表れだともいう。

 

    昔から人を喰ったような奴はこの世に大勢いるが、彼のそうした態度に、現代人が忘れかけていた料理を前に「いただきます」と「御馳そうさま」の挨拶が持つ意味をもう一度考えさせられる。命を救おうとする医者と患者の立場とは違うが、独り野山に入り、獣と対等な目線で命をやりとりする片桐の姿に時間も忘れて思わず魅入ってしまった。

 

   ところで、毎晩お酒を頂くマタギは体から始終アルコール臭が消えないので、罠師はご無理!鉄砲猟をする場合でも旅客機のパイロット同じく猟の前の飲酒は禁物だ。されど、マタギでもない当方、療養中とはいえ、オラモ、ああああああああ!酒呑みてぇ~ヨ!!