「性同一障害」については、新聞記事などで良く目にし、この障害に基づく医療措置も公に認められるなど、障害に対する認知や障害者に対する理解も深まりつつあるが、つい最近「身体完全同一性障害」なる記事を読んだ。読むにつれ「まさか!そんなことが・・・」と驚きを隠せなかった。
具体的いうと「五体満足」な状態に違和感を持ち、自分の身体の一部を切断したい願望に囚われるという病気。 以下、美馬 達哉(立命館大学教授)解説引用して当方なりにその要約を伝えたい。
【私たちが「正常」や「健康」と信じている価値観を揺さぶる病がある。 自分の手や足が余分で不快な異物と感じ、それを切り落とすことを心から望む「身体完全同一性障害(BIID)」という病気もその一つ。
この種の病気となった患者は、幼少期から特定の身体の部位(たとえば足)が自分の身体の一部ではないという感覚をもっており、切り落とそうと努力する。切り落とすことの次善の策として不用な方の膝を強く曲げて縛って片足で歩くほうが、気分が良いという人もいる。
だが、どんなに病院に頼み込んでも、そんな切断手術を喜んでしてくれる外科医はいない。 それでは、どうやって切り落とすのか?
スーパーでドライアイスを大量に買ってきてバケツに詰め込んで、不用な足をバケツに突っ込んで、半日かけて凍らせるという。痛みはあるようだが、冷たさによって感覚は麻痺するらしい。凍傷になった頃合いを見計らって救急病院に駆け込んで切断手術を受けるという。
米国では、銃で自分の足を撃って、暴発の事故に遭ったと説明して、救急病院で切断してもらったケースもあるという。
逆に言えば、奇妙に聞こえるだろうが、「五体満足」な身体であることによって生じる苦しみがそれだけ強いということだ。 それがわかるきっかけになったのは「幻肢」という現象だ。事故や外科治療のために手足を切断された人の一部は、存在しないはずの手足がまだ存在している感覚を持っていたり、存在しない手足に痛みを感じたりする。痛みがある場合には「幻肢痛」と呼ばれる。
こうした幻肢は、実際に存在する身体の障害の状態と脳内の身体イメージとがずれてしまった結果と考えられている。実際の身体と身体イメージの間にずれが、不快や痛みとして感じられるようだ。
脳内の身体イメージと実際の身体のずれが病を引き起こしているとすれば、その苦しみを取り除くにはそのずれを埋める治療が必要となるだろう。 とはいえ、脳内の身体イメージが「障害者」だから、それに合わせて実際の身体をわざと障害者にしてしまう「治療」には、どんなに当事者である本人が満足していたとしても、多くの人が倫理的な戸惑いを感じてしまうだろう。】
(今日のおまけ)
余りの驚愕な現実に言葉もない。折しも現在、平昌パラリンピックが開催中。交通事故などの不慮の事故や病気で四肢をなくしたり、機能マヒが起こってもなお挑戦し続ける選手たち。そうした境遇にあっても自暴自棄にならずメゲナイ精神力には感服させられる。
人生至る所に青山あり。思いもよらずそんなアクシデントに見舞われた方々には現実に向き合う力があるのだと思う。今、闘病中の患者さんやケガを治療中の方々の快復を祈りつつ、こうした人にこそ「福神」や「徳神」のご加護がありますように・・・。