世は「令和」、「令和」とお祭り騒ぎで浮かれている。その一方、平成も終わろうとした先月、東京・文京区のカフェで、ベビーカーから火が出て、乗っていた3歳の女の子がやけどを負って死亡した。
その事件の前、東京・豊島区の交差点で、叙勲(瑞宝重光章)の元高級官僚が信号無視の無謀運転で、母子2人が死亡した。子供は2歳足らずでその短い命を閉じた。
その後、安曇野市の長野県立こども病院では、体重258グラムで生まれた男の子が順調に成長、退院した。無事に退院する男児としては、出生時の体重が世界最小だという。
そして平成最後の先月末、TVドキュメンタリー番組で、医療的ケアが必要な子どもを抱える家族の孤立を映像とともに、女優の竹内結子が切々と語っていた。
この4つの出来事、何たる強烈なコントラスト。人の世はかくも非情で容赦しないのか。懸命、努力、報い、美徳を作ろうと懸命だった人々や先人らが造ってきたこれらの歴史。歴史の悲劇はそのどれもが褒められたものではないが、善きかも悪しきかな、こうした事件や歴史上の人々の足跡に今がある。
最初の事件は、病弱だった女の子が使っていた、ベビーカーに積まれた酸素ボンベが発火したらしい。
2番目の事件は、論外で未だかつて運転手は逮捕されないままだ。遺族がやっとテレビ会見で心中を語ってやっと警察も重い腰を上げようとしている。交通弱者はいつも蚊帳の外、ここまで較差が進むと、お国といえども信じられない。
3番目の件については喜ばせいて頂いた。ご家族は上田市にお住まいのお方のようだが、家族連れで無事退院する姿をみて「よかったなあ」とつくづくそう思った。でも、何故、点滴の針も入らないようなあんな未熟児に対して、帝王切開による出産に踏み切ったのか、今一つ合点がいかない。だからと云って、「こども病院」の「子供」と「世界最小」をこの病院のみならず日本の近代医療の広告塔にしたとは思いたくもない。
そして最後、番組では6歳の女の子・ひかるちゃんと両親、そして1歳の男の子・叶真(とうま)くんと母親の物語だ。ひかるちゃんや叶真くんは、生きていくために医療機器を身につけ、24時間周りの支えが必要な「医療的ケア児」と呼ばれる子供たちだ。
だが、社会的な支援体制が十分に整備されていないなか、家族は様々な困難に直面している現状をドキュメントで放映していた。そんなひかるちゃんと叶真くんは、そうとも知らず、周囲を驚かせる成長を続ける。
幼くして絶たれた子供の命、障害を負っても、なお生きようとする命とそれを支え続ける親たち。この家族、支援者らの強烈な紐帯や愛育の姿勢に言葉もない。
娘も嫁たちも(孫の)妊娠が判明した時、誰が助言した訳でもなく、遺伝子異常や染色体異常、代謝異常などさまざまな病気を見つけるための「出産前(羊水)検査」は受けなかった。
なにが人の運命を左右しているのか分からないことが余りに多すぎる。転ばぬ先を案ずるより、転んだ後に如何に立ち上がるのかを考えておくべきかもしれない。