自分対するご褒美、時間の共有、感覚と価値観の修正、暇つぶしなど、いろいろな意味を込めて2月1日に封切りとなった表記のシネマでデートを愉しんできた。これで、最近シアターでの邦画鑑賞は一昨年の佐藤浩市主演「64(ロクヨン)」に続いて二度目となった。
映画の原作は池井戸潤で、主人公は野村萬斎演じる八角民夫。これに香川照之、鹿賀丈史、橋爪功や北大路欣也などが脇役を演じる。テーマは「組織」のどこにでもある不正、隠蔽、虚偽や実績至上主義などを背景にした企業活動の犯罪性を採り上げたストーリーだ。
それを人の命、正義、使命、それにもっと言えば「人の生きる道」や「組織人が持つ固有のイヤラシイほどの功罪」を見事にコントラストしながらこの映画は描いている。
それぞれのシーン、シーンに折り込まれた台詞の一言やツールの一つひとつに深い意味があってそれらが、映画が進む度に次第に解き明かされていく。そうした企業ミステリーの側面も持ち併せ持っている。だから余計にこの映画が愉しめたのかもしれない。
時あたかも厚労省の統計偽装が社会問題となっている折、どこの会社でも、どこの役所でも、どこの組織でも命や自身の将来を賭してでも本気で組織に抗う人は少ない。「寄らば、大樹の陰だ!」、「長いモノには巻かれろ!」、「自分の家庭や家族のことを考えろ!」、そんなことを諸々考えると、誰もが立ち止まることをせず迎合し、上意には絶対に背かない。この映画も原作もそこにスポットをあて人間のもつ狡猾さ、弱さを徹底的に暴いていく。
映画のエンドロールに流れた八角のセリフがすべてを物語る。「企業や組織の不正(不正義)はいつの世も絶対になくならない。そしてその不正の数は減れども同じ過ちが何度も繰返される」「それは、藩内でしか生きられない武士思想と同じだ。脱藩すればもはや武士として生き残ることはできない」「だからこそ、この日本は島国でありながら、今日、先進国の仲間入りを果たすことができた・・・」と締めくくる。
観終わっての感想を一言。爽快さは残らないが、それを自分自身が過してきたサラリーマン生活に置き換えてみると、なんとも忸怩たる複雑な心境だ。是非、お暇のある方とご興味のある方は興行期間中に劇場に足を運んでいただきたい。
- 映画撮影中「東京建電本社」のシーンに、中央区京橋一丁目の「戸田(建設)ビル」が何回か使われている。もしやお宅の会社の近くでは?